「ビジネスにおいてストーリーテリングが効果的だと聞いたけど、どんな事例があるんだろう?」
今、あなたはこんなこと思っていませんか?
プレゼンは得意じゃないし、相手が話をちゃんと聞いている感じもしない。
上司には「ストーリーを語るんだ」と言われても、どのようにストーリーを語ればいいかわからない。
もし、ストーリーテリングが簡単に実践できて、伝えたことに相手に共感してもらえたら嬉しいですよね。
そんなあなたにハッピーなお知らせ。
この記事を読めば、ビジネスにおけるストーリーテリングの事例がすべてわかります。
過去の私は、自分の仕事内容をうまく伝えられず、交流会で知り合った人と次に会っても忘れられている経験を何度もしてきました。
しかしストーリーテリングの本質を知り「相手の記憶に残る伝え方」を実践することで、某大手広告会社の方に向けた発表会で「良いプレゼンで、とても共感しました」という言葉をいただくことができたのです。
ストーリーが共感を生むことは脳科学でも証明されており、ビジネスの場面でも活用できます。
今回は、ストーリーテリングを使った
- プレゼンの事例
- スピーチの事例
- マーケティングの事例
- ブランディングの事例
これらで圧倒的な成果をあげた事例を『10選』ご紹介します。
また、1000時間以上ストーリーテリングを研究した私が、本当に参考となった事例だけを厳選しました。
後半ではストーリーテリングの失敗例も紹介し、成功する4つのポイントもまとめましたのでこちらもご覧ください。
あなたがストーリーを語ることで、企業の成長と発展に繋がりますように。
プレゼン事例|ストーリーテリングで共感を生む
ストーリーテリングを使ったプレゼンは「共感」を生みます。
これはストーリーを聞いた相手が疑似体験をするからだと言われています。
あなたが自分自身の体験を話すことで相手は脳内でイメージし、お互いの脳の同じ領域が活性されることが脳科学で証明されています。
これがいわゆる「感情移入」です。
以下はストーリーテリングを使ったプレゼンの代表例です。
1. 佐藤真海@東京オリンピック招致
「TOKYO 2020」
2021年に開催された東京オリンピック、パラリンピック。
この招致を決定づけたのがパラリンピック日本代表の佐藤真海さんのプレゼンです。
下記にプレゼン全文が掲載されているので、ご確認ください。
「五輪招致」を勝ち取ったプレゼン~日本語・英語全文佐藤 真海選手
彼女のプレゼンが成功した理由は「聞き手のニーズの理解」です。
今回でいう聞き手のニーズとは「IOC(国際オリンピック委員会)の望む未来」です。
オリンピックの精神
「スポーツを通して心身を向上させ、文化・国籍などさまざまな違いを乗り越え、友情、連帯感、フェアプレーの精神をもって、平和でよりよい世界の実現に貢献すること」
ピエール・ド・クーベルタン:フランス教育者
つまり、IOCはスポーツを通じて、相手を思いやる精神を伝え、世界平和に貢献することを望んでいます。
彼女は自分が経験した「スポーツの力によって人々を笑顔にできたストーリー」を語ることで、強い共感を生んだのです。
2. ブライアン・スティーブンソン@TED
2013年。ブライアン・スティーブンソンはTEDで「司法の不公平」について語り、わずか23分のプレゼンで130万ドル(約1億4000万円)を超える寄付金が集まりました。
冒頭の5分だけでも見ると参考になります。
彼が共感を得た理由は、冒頭で「親近感が湧くストーリー」を語ったからです。
この親近感とは「家族の話」。
おばあちゃんは誰にでもいますよね?
彼はおばあちゃんから学んだ「アイデンティティの力」をストーリーで語り、聞き手に親近感を持たせたのです。
私たちは、相手に難しい話を伝えるときデータ(数字)で説得したくなります。
しかし、彼のように親近感が湧く話で安心感を与え、相手を聞く体制にするのも、語り手にとって大切なことです。
彼のプレゼンは、TED30年の歴史で一番長いスタンディングオベーションとなりました。データではなく、ストーリーで人を動かすとても良い例です。
スピーチ事例|ストーリーテリングで記憶に残す
ストーリーテリングを使ったスピーチは「記憶」に残ります。
なぜなら、ストーリーは聞き手が映像をイメージするからです。
- 温泉旅行でお父さんが酔っ払って花瓶を割った話
- セブ島で友達がiPhoneを無くした話
こんな体験って、いつまでもイメージで記憶に残っていませんか?
(※すいません、これは私の話です)
先述の通り、ストーリーは聞き手が「疑似体験」をするので記憶に残りやすいのです。
以下、代表例です。
3. スティーブ・ジョブズ@スタンフォード大学
「ハングリーであれ。愚か者であれ。」
Apple創業者。スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式で語られたスピーチは世界で3000万回も再生され「伝説のスピーチ」とまで言われました。
このスピーチから学びは「失敗を語る」ことです。
失敗は誰にでもありますよね。
私も高校、大学と受験に失敗した過去があります。
ギャンブルにハマり、大切な友達を失いかけた過去があります。
しかし、失敗を正直に語ることで、
「あっ、こんな人でも失敗しているんだ」
「この人なら自分をわかってくれるかもしれない」
このように、あなたに信頼を寄せてくれるのです。
自慢話がダメなわけではありません。
ただ、自慢ばかりになると人間味がなくなり、相手と距離感が生まれます。
失敗から学んだ教訓は強力なメッセージになりますので、ぜひ失敗を語る勇気を持ってください。
4. 豊田章男@バブソン大学
「あなたも、自分だけのドーナツを見つけてください」
トヨタ自動車の社長。豊田章男が卒業式で語ったスピーチは、彼が立ち去った後でもスタンディングオベーション止みませんでした。
彼はこの14分間のスピーチで21回もの笑いを取ります。
この「ユーモア性」には舌を巻きますね。
彼のスピーチで特に注目して欲しいのが、冒頭です。
一連の流れを見ていきましょう。
皆さんの中には卒業後にどんな仕事につけるか、
不安に感じている人もいるかと思います。
まず、これから社会人になる『不安』を言葉にし「私はあなたを理解している」というメッセージを伝えます。
皆さんの心配事をまずは解決しましょう。
「私はこの『不安』を解決できる」と伝えることで、期待を持たせ注意を引きます。
皆さん全員にトヨタでの仕事をプレゼントします。
予想外の解決法で驚きを与え、相手を興奮させます。
ただ、まだ人事部からのOKはもらっていませんが。
期待を裏切るユーモアなオチで笑いを取り、相手の心をリラックスさせました。
私たちの脳は『退屈な話』に注意を払いません。
人間は、ユーモアを始め、喜び、恐怖、驚きの感情が起こると、扁桃体(へんとうたい)からドーパミンが放出されます。
ドーパミンは、記憶、注意、情報処理を助ける作用があります。
豊田章男は冒頭で相手と繋がるユーモアな話で、聞き手と心で繋がったのです。
マーケティング事例|ストーリーテリングで信頼を築く
マーケティングとは見込み客に「あなたのブランド」を作り上げる活動です。
あなたも広告、チラシ、CMなどでブランドを知ったことありますよね。
しかし一方、ミレニアル世代のCM嫌いが加速しているのも事実です。
録画したテレビのCMカット。Youtubeの「広告スキップ」の連打。
私たちは「コンテンツを邪魔する広告」を嫌うようになってきました。
ですが、ストーリーテリングを使い見たいCMを作る企業もいますので、事例を紹介します。
5. アマゾン@CM
アマゾンはストーリーテリングを使ったCMの代表例です。
Youtubeで公開すると、たった4ヶ月で1500万回再生されるほど。
ここでは特にエンゲージメントの高いCMをご紹介します。
アマゾンからの学びは「合理的な訴えをしない」点です。
一般的なCMは「便利、安さ、インパクト」など、機能や価格を視聴者の注意を引きます。アマゾンの場合「翌日配送」や「豊富な品揃え」を強くアピールしたいところですね。
しかしアマゾンは、日常にアマゾンプライムを取り入れる「幸せな風景」だけを訴求することで「アマゾンはどのような未来を提供してくれるか?」と視聴者を想像させます。
また、アマゾン創業者であるジェフ・ベゾスもストーリーを大切にしています。
役員会議で使われていた20枚のパワポ資料は、たった6ページのストーリーで伝えることに変更し、過去から未来の因果関係を説くようにしてるみたいです。
6. レッドブル@CM
『Red Bull 翼をさずける』
レッドブルは世界シェアNo.1のエナジードリンクメーカーです。
世界シェアNo.2のモンスターと比べて、量は52%も少なく、値段はほぼ変わらないのに、本数の売上は2倍以上の差をつけています。
レッドブルのCMって面白いですよね。
これはストーリーの基本である「日常→事件→教訓」で作られているからです。
ピクサーやロッキーなど世界中で愛される映画は全てこの3部構成が基本です。
(※王道のストーリー作りについては別記事で解説します)
簡単にご説明します。
- 日常:主人公のシマウマはのんびり化粧をしながらレッドブルを飲んでいる
- 事件:シマウマが川に入ると、ワニに襲われそうになる
- 教訓:レッドブルを飲んでたシマウマが勝つ(翼を授かったものには敵わない)
人間はストーリーを通して新しいことを学ぶ生き物です。
これは狩猟時代に獲物の狩り方をストーリーで語り合い知恵を共有していたことから、人間のDNAに組み込まれていると言われています。
レッドブルは私たちに『闘争心』を伝え続けていますね。
顧客の潜在意識にこのメッセージを植えつける事で、私たちは自然とレッドブルを手に取ってしまうのです。
ブランディング事例|ファンになるストーリーテリング
ストーリーテリングを使うとブランドの理念を伝えることもできます。
7. ダブ@CM
「本当の美しさを閉じこめないで。」
ダブは、ユニリーバのパーソナル・ケア製品ブランドです。
日本には1999年に登場し、現在は世界80ヶ国で販売されています。
ダブのストーリーテリングのポイントは『主人公』です。
実際のターゲット顧客を主人公にすることで、より強い共感力を与えています。
ダブの理念は「本当の美しさ閉じ込めないこと」
しかし市場調査から、10代女性で「自分の容姿に自信がある人」がたった7%しかいないことを知りました。
ダブは自己肯定感を高めるキャンペーンとして、学生たちがクラスメイトの目に映る自分自身の姿を通して、自分のありのままの美しさに気づいていく様子を動画にしました。
製品のアピールではなく、企業理念でファンを作るとても良い例です。
8. エクストラガム@CM
エクストラガムはアメリカの「シュガーレスガム」メーカーです。
ハンカチ必須です。私は泣いてしまいました。
エクストラガムから学ぶべきポイントは「概念の転換」です。
一般的にガムは、口臭予防や、虫歯予防、エチケットとして使われています。
しかし、エクストラガムは独自の顧客調査で、ガムを「コミュニケーションツール」に使う人が多いことに気づきました。
- 新学期、友達と仲良くなったきっかけは「ガムをあげた」こと
- 恋人と喧嘩して沈黙が続いたとき「ガムを渡した」ことで、もう一度話すきっかけができた
このように、一つの商品を違った観点からアプローチすることも大切です。
失敗事例|ストーリーテリングの誤解
ストーリーは共感を生むと同時に、理解を間違えると失敗する場合があります。
以下、2つの事例をご紹介します。
9. 失敗|革靴@クラウドファンディング
革靴のクラウドファンディングで集まった資金が、72倍もの差がついた事例です。
下記サイトの「プロジェクトA」と「プロジェクトB」の動画をご覧ください。
キャリアもライフも上げるなら、LHH転職エージェント(Lの転職)。LHHは総合人材サービスをグローバルに展開するアデコグ…
この事例からわかることは、ストーリーは「過程ではない」ということです。
なぜ過程はストーリーではないのか?
それは「未来」がないからです。
工場で丁寧に縫って、手作業で皮をなじませて、職人が一つ一つ作り上げて。
一見すると、素敵なストーリーですよね。
しかし、あなたは靴を買うとき「どんな服に合わせたいか?」「どのような場面で使いたいか?」と未来の自分を想像しませんか?
ぜひ、その商品を手に入れることで得られる未来を顧客に想像させてください。
10. 失敗|ネイションワイド@スーパーボウル広告
ネイションワイドはアメリカ大手の保険会社。
この動画はスーパーボウルの広告で流されると同時に、SNSで多くの批判を浴びました。
※字幕推奨
ネイションワイドの最大の失敗は「バッドエンド」のストーリーにしたことです。
冒頭でも書きましたが、ストーリーテリングは強烈な共感を生みます。
ストーリーを不幸な結果にすると、視聴者の気持ちも不安のまま終わってしまいます。
もし、ストーリーでバッドエンドを使う場合『レッドブル』のようなコメディー性を持たせ、心を調和させてください。
ストーリーテリングを成功させる4つのコツ
今回、紹介した「10の事例」の大切な4つのポイントをまとめました。
1. 聞き手のニーズを理解する
ビジネスで大切なのは「潜在ニーズ」の理解です。
潜在ニーズを理解していないと、顧客の気持ちと大きく離れてしまう場合があります。
以前マクドナルドはお客様のアンケートから、ヘルシーで健康的な「サラダマック」を販売しました。しかし、これは大失敗。
その後、ビックマックのビーフを2倍にした「メガマック」を販売し大ヒットを記録しました。マクドナルドの顧客が本当に求めていたのは、ガッツリとしたボリュームあるハンバーガーだったのです。
ぜひ、アンケートから得られない「顧客が本当に望む未来」を考えてください。
2. 合理的な訴えをしない
価格や機能は注意を引くことはできますが、記憶には残りません。
しかしストーリーテリングを使い、感情と繋がれば心の記憶に残ります。
あなたのサービスを使うことで「どんな幸せな未来になるのか?」を伝えてください。
3. 失敗を語る
「失敗を語ると信頼を失ってしまうのではないか?」
もしかしたら、このような考えをお持ちかもしれません。
しかし、人間誰にでも失敗はあります。
あえて正直に、誠実に語ることが信頼に繋がることを知ってください。
4. 日常→事件→教訓で考える
今回ご紹介した成功例のほとんどがこの型で作られていることにお気づきでしょうか?
「日常→事件→教訓」はストーリーづくりの基本です。
あなたが伝えたい「教訓」を明確にし、それを学んだきっかけの「事件」を選択し、どんな「日常」であったかと逆算して考えてみてください。
ストーリーテリングの事例まとめ
ストーリーテリングの事例紹介はいかがでしたか?
今回の事例を参考にストーリーを考えていただければ、きっとあなたのビジネスはうまくいくでしょう。
ストーリーはあなたの人生を変えるきっかけとなります。
あなただけのストーリーができることを楽しみにしています!